ワールドガイド
●世界の状況
突如世界を襲った『大洪水』の前と後では、その様相は一変しています。
大洪水前、世界には大陸と数多くの島があり、多種多様な生命に満ちていました。
人類も世界中に存在し、国をつくり、繁栄していました。
しかし、今から二年前に起こった大洪水により、すべては海に沈んだのです。
人々が築いてきた歴史も、文明も、高度な魔法技術も、この時に滅びました。
しかし、ある公国の一部は、水魔法による障壁を張り海底で生き残っていたのです。
●水中世界について
○生き残った人々
水の障壁が張られたのは、コーンウォリス公国メイユール伯爵領にある水の神殿を中心とした、半径約3km圏内です。
障壁により助かった人は、およそ2000人と言われており、その大半が伯爵領にある港町の住人達です。
他には、魔法学校や神殿の関係者、旅行者、仕事でたまたまこの地に滞在していた人などがいます。
また、隣国の王国の姫と、共に訪れた貴族や護衛の騎士達もいます。
大洪水発生前、伯爵領にある漁港から女性と子供を優先に船に乗せて避難させました。
そのため、ここには男性が多く、特に子供は少ないという状況です。
伯爵領には『水の神殿』があり、水魔法に長けた魔術師が数多くいました。
彼らにより、大洪水に耐えうる障壁を張り巡らせることができたのです。
しかし、その時の魔術師達への負担は大きく、亡くなった者も少なくありませんでした。
○水の障壁
水の神殿で水の魔術師達により維持されています。
また、彼らに加え、ウォテュラ王国の姫も協力しています。
しかし、魔術師達の消耗は激しく、人手不足というのが現状です。
○人々の生活
水の障壁内では、毎日火の魔術師達により人工太陽が打ち上げられ、一日が作られています。
明るさに問題はありませんが、熱量その他が不足しているため、植物の生長や家畜の生育に弊害が出ています。
今後、食糧をどう確保していくかが課題となっています。
元々伯爵領は水の神殿と漁港があるだけの田舎であったため、特別大きな産業はありません。
漁港は海に沈み漁業はできないので、彼らは農業や畜産業と兼業していればそちらに絞ったり、そうでない者は別の職に移ることになりましたが、生活は厳しい状況です。
領内に魔法学校が一校ありますが子供は少ないです。この学校は試験を通過すれば年齢に関係なく通える、領内唯一の学校です。
○アルザラ港(通称)
伯爵領にあった漁港です。
地図にはニルド港とありましたが、伯爵より港と漁業従事者の管理を任されていた家の家名がアルザラであったため、人々にはアルザラ港と親しみを込めて呼ばれていました。
漁業利用の他、貨物船や遊覧船が入港していた、そこそこ賑わいのある港でした。
二年前の大洪水直前に、ここから避難民を乗せた船が出ました。
現在は海に沈んでしまったため漁はできず、港は封鎖されています。
しかし当時の漁業組合は残っていて、港町の住人をまとめているのはここの組合長です。
町らしい町はここしかないため、ほとんどの人がここを拠点に活動をしています。
○メイユール伯爵領
かつてはコーンウォリス公国にある一地方でしたが、水の障壁に守られているのはほぼこの伯爵領のみです。
そのため、障壁内を統治しているのはアシル・メイユール伯爵です。
○コーンウォリス公国
ウォテュラ王国から独立した小さな公国です。
公王クライヴ・コーンウォリスは、大洪水の日、外国を訪問していたため亡くなっています。
○箱船計画
大洪水発生後、障壁内に逃れた人々を乗せ、陸地を探し出して移り住むための船として、以前から計画・造船されています。
完成までは、もう少しかかります。
○マテオ・テーペ
水の神殿の近くに、巨大な柱のような岩がそびえ立っています。
その岩の形が伝承に出てくる岩に似ているため、そう呼ばれていました。
現在では誰が言い出したのか、水の障壁に守られたこの小さな世界を指す言葉となっています。
●主要施設について
○神殿
障壁内の中心にある水の魔力を司る神殿で、水の障壁を保つための重要な場所です。
水の魔術師達が詰め、交代で障壁を維持しています。
神殿の近くには、マテオ・テーペと呼ばれる巨大な円柱状の岩場が広がり、そこからは障壁内が一望できます。
○造船所
現在港は封鎖されているため、水の神殿の近くにある大きな池(エーヴァカーリナ池)に新たに設けられました。
箱船はここで作られています。
気さくで大らかな所長の気風が満ちた、活気ある場所です。
元々の造船技師や洪水後に働く場所を求めてきた人が集まっています。
宿舎もあります。
○領主の館
伯爵の別荘です。
本宅は公国の中央都市にありましたが、水没したため今はここで暮らしています。
客室には、ウォテュラ王国の姫や他国の貴族が暮らしています。
よく整えられた庭が、帰る国を失った姫達を慰めているそうです。
また庭には小さな池があり、伯爵がたまに釣りをすることがあります。
○魔法学校
現在ある唯一の学校。
・魔法専科
基礎学力試験に合格すれば年齢に関係なく入学できます。
魔法を専門的に勉強するコースで、基礎から応用までを学びます。
・専門研究機関
魔法専科を履修した後、試験に合格すればさらに先の専門課程へ進むことができます。
・学生寮
遠方の生徒や留学生のための学生寮が敷地内にあります。
・天文塔
主に天文学の学習と研究に使われていた塔です。
今は改造されて、ここから人工太陽を打ち上げています。
●魔法について
○魔法とは
素質があれば習得することができる特殊な技術のことです。
この存在は誰でも知っています。
魔法学校等で各個人の素質に合った魔法技術を学ぶことができます。
属性の判断は、魔法研究機関で検査することができます。
仮に検査をしなかった場合でも、素質があれば物心つく頃から十代後半までに、自然に気づいていくようです。
例えば、火に恐怖を感じなかったり、風の声が聞こえたりなどです。
また、そういったものにまったく気づかない人もいます。
鈍感な人という場合と、魔法に興味がない場合です。
しかしこのことが素質がないことなのかというと、そうでもないようです。
○魔法の行使
魔法の発動方法については、地域や民族によって違いがありました。
基本的には集中をして発動をするのですが、集中の手段として印を結んだり、詠唱を行う地域や、杖などの道具を用いる地域もありました。
また、軍事行動ではマジックアイテムや、魔法兵器による魔法の発動も行われていたようです。
○魔法鉱石
各属性の力を帯びた特殊な鉱石です。
この鉱石と魔法技術を用いて、日常的なものから限定的なものまでのさまざまな道具や薬品類が作られていました。
大洪水前の都市部では、これら道具の使用は日常的なものでしたが、港町にはあまり普及していませんでした。
なお、この魔法鉱石は現在は採掘されておらず、とても貴重なものとなっています。